ノバルティスファーマが3年連続となるリストラの断行が日刊薬業によって発表されました。
2018年11月、そして2020年5月には成長著しいオンコロジー部門を対象としたリストラを断行したノバルティスファーマ。
毎年の薬価改定が行われることになった製薬業界では、新薬を出し続けない限り企業の存続が危ぶまれている事態となっております。
その中でも比較的新薬が多いノバルティスファーマでさえも、頻回にリストラを行わなければならない今の製薬業界は一体どのような環境なのでしょうか。
2021年に発表されたノバルティスファーマのリストラから製薬会社全体としての今後を検証してまります。
2021年ノバルティスファーマ早期退職(リストラ)の概要
日刊薬業やSNSなどで入手した今回のノバルティスファーマ早期退職(リストラ)の概要は以下の通りです。
●対象者:勤続5年以上の全営業・マーケティング・メディカル部門の社員
●年齢制限:なし
●募集期間:2021年4月中旬から5月初旬まで
●退職日:2021年7月31日
●募集人数:人数制限を設けない
●優遇措置:年齢に応じて係数をかけて特別退職金を用意
募集人数は人数制限を設けないそうですが、管理職(マネージャ職)を中心として早期退職(リストラ)が実施されるとのことです。
組合が強いノバルティスファーマでは組合員はある程度守られるとして、おそらく給与水準が高い管理職層を中心に「肩たたき」が行われることと推測致します。
ノバルティスファーマは2020年5月に「オンコロジー部門」のみを対象としたリストラを実施致しましたが、今回はその「オンコロジー部門」を除く勤続5年以上の全ての社員が対象となっており、それなりの人数が退職に追い込まれることも予測されます。
しかも今回のノバルティスファーマのリストラでは、MSLなどの本社部門の特殊職の方も対象とのことでもはや「MSLは安泰」という時代ではなくなってきたのがわかります。
ノバルティスファーマの将来性は明るくないのか?
今回のノバルティスファーマのリストラの要因が、2020年に新発売した呼吸器領域の新薬「エナジア」と循環器領域の新薬「エンレスト」の失敗と言われております。
また眼科領域の「ルセンティス」や免疫領域の「コセンティクス」も競合他社品が優位な状況で、先行きは明るいとは言えません。
ただノバルティスファーマは1症例の薬価が3,349万円と話題を呼んだ「キムリア」など、革新的な薬剤を上市に漕ぎ着けるなど、希少疾病の薬剤を多く世に送り出している世界的にも優良な製薬会社でもあります。
2021年1月現在のノバルティスファーマのパイプラインを見てみましょう。
https://www.novartis.co.jp/sites/www.novartis.co.jp/files/clinical_pipeline_Jan2021.pdf
既存品の適応拡大を含めて、フェーズⅢだけでも18品目がラインナップされております。特にオンコロジー領域では8品目と多く、とてもパイプラインが希薄で今すぐリストラを行うような未来ではないように見えます。
ただ現在のラインナップとパイプラインと現在のMRをみた時に明らかに「MR過剰」なため、今回のリストラに踏み切ったと思われます。
公式なものでノバルティスのMR数は2019年の約2,000人の公表を最後にオープンにされておりません。
2018年末と2020年5月のオンコロジーのリストラがありましたから、現在のMR数は1,500人前後と思われますが、それでも今の製薬会社の中では多い方です。
今後は自分の在籍する会社が「パイプラインが豊富」だからと言って、今のMR数が維持されると思わない方が得策でしょう。特にコロナ禍で「MR不要論」も加速してきておりますので、油断大敵です。
ノバルティス規模でリストラならプライマリー主体の製薬会社はもっと危ない
そんな革新的な薬剤を発売し続けているノバルティスファーマでさえリストラを断行するのですから、世の中には「いつリストラを断行してもおかしくない」製薬会社はかなりある、と言えます。
今回のノバルティスファーマのリストラの要因は「新薬の不調」だと言われておりますが、それ以前にコロナ禍で売り上げに比例して「今までのMR数が必要なくなった」ということが言えます。
この1年以上に及ぶコロナ禍で現在MRの皆様の肌感覚で「あれ?今の自分が担当しているエリアってこんなにMR必要じゃないよな?」と感じている方は要注意な会社と言えます。
新薬豊富なノバルティスファーマでさえ「MR過剰」だと思っているのですから、コロナ禍では既存品でかつ生活習慣病の薬剤を扱っている製薬会社では正直「MR過剰」と言えます。
製薬会社はコロナ禍で医師や薬剤師にとって「必要な製薬会社」と「全く必要でない製薬会社」に真っ二つに分かれました。特に後者の「全く必要でない製薬会社」とはプライマリー主体の製薬会社です。
コロナ禍で「必要な薬か全く必要でないか」がはっきりと分かれました。
ノバルティスは「必要な薬」が多い製薬会社ですが、そこでもリストラを断行するのですから「全く必要でない」製薬会社は今後確実にリストラ断行、もしくは給料や福利厚生に手をつけることは間違いありません。
リストラ対策は万全に
もはやどこの製薬会社に所属していても安泰という時代ではなくなりました。ノバルティスのリストラは製薬会社に勤めている限りは「明日は我が身」を意味しております。
ご自身がいざリストラの受け目に会った時に「丸腰」では路頭に迷うだけです。そこで当ブログで再三申し上げておりますが、ここでもう一度「今すぐ出来るリストラ対策」をご紹介致します。
どこでも通用する「資格」を取得する
これも当ブログで再三申し上げてきておりますが、「MR認定証」しかないのであればコロナ禍で時間を持て余しているMRの方々は自社に残っても、他社へ転職することになっても役にたつ「資格取得」を行うべきです。
私はこれまでに「ファイナンシャルプラインナー」と「サービス接遇検定」「メンタルヘルスマネジメント検定」の三つの資格を取得致しました。
どれも今の会社を受けた時の面接で「なぜこの資格を取得したのか?」「その資格をどう生かしてきたのか?」について問われました。ここをはっきりと答えることが出来るのであれば、どんな資格を取得しても良いと思います。
リストラでいざ転職しようと思った時に何も武器がないようでしたら書類審査で落ちてしまいます。人事部の方の目に付きやすい資格を取得することが、一つのリストラ対策にもなります。
私の三つの資格取得について記事に書いております。MRの皆様の学力であれば難易度は高くない上にどこにでも持ち運びできる「ポータブルスキル」にもなりますので、MRが取得するべきおすすめの資格になります。
「転職サイト」へ登録して市場価値を見出しておく
「転職サイト」へ登録することが何よりもリストラ対策になる、という話は当ブログでも再三申し上げて参りました。
会社がリストラを断行する時には決まって「再就職支援プログラム」なるものが立ち上がって、手上げした方には第三者機関が入って再就職を全面的にバックアップしますよ、という制度です。
しかし「再就職支援プログラム」なんてあてにしない方が良いでしょう。結局会社は去るもの追わずですので、辞める人をそこまで親身には扱ってくれません。
であればいざリストラを断行する前にご自身で活動を起こすべきです。それが転職サイトに登録してご自身のキャリアを棚卸しすること、そしてご自身では気がつくことのなかった潜在的な「市場価値」を見出すことです。
ご自身のキャリアを棚卸しするとはどういうことかというと、履歴書や職務経歴書を作成してみてご自身の強み(キャリア)を見つけることを意味します。
また潜在的な市場価値を見出すとは、転職サイトに登録するとその転職サイト会社の「キャリアアドバイザー」との面接が行われます。
そこで自分では気がつくことのなかった潜在的なスキルや能力が炙り出されることがあります。
ご自身の強みや潜在的なスキルを早期に発見することによって、早めに手を打つことができ、いざリストラが断行されたとしても路頭に迷うことがなくなります。
いざという時路頭に迷わないためには転職サイトには事前に登録しておくべきです。ではどの転職サイトに登録すれば良いのでしょうか。
製薬会社MRの皆様向けの転職サイトは下記のサイトになります。どこ転職サイトもこれからもMRを続けたい方、他業種にチャレンジした方にもコロナ禍でもまだ求人は豊富な方と言えます。
●サイト側から求人情報が来る「リクナビNEXT」
●外資系製薬会社の求人が多いのが「JACリクルートメント」MR以外にも医療機器メーカーの求人も多い
●MRの給与体系を変えたくないハイクラスな求人が多いのが「リクルートダイレクトスカウト」
●20代30代のMRの求人を強化しているのが「マイナビエージェント」
製薬会社MR向けの転職サイト・転職エージェントについて、詳しくはこちらの記事で紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください!↓↓
ただ昨今の製薬業界リストラの嵐により、MR求人は決して多いとは言えない状況です。リストラをきっかけにMRから医療機器メーカーへ転職し、コロナ禍でも大きなやりがいを感じている方もおります。
そんなMRから医療機器メーカーへ転職された方にインタビューを行っておりますので、ぜひ転職の際の一つの選択肢として参考にしてください↓↓
また薬剤師MRの方は、コロナ禍を機会に調剤薬局や病院薬剤師へキャリアチェンジされる方が多くなっております。
私の周りではリストラをきっかけにMRから調剤薬局薬剤師へ転身し、コロナ禍でもやりがいを感じている方がおります。
MRから調剤薬局へ転身されたお二人の薬剤師の先生にもインタビューを行っておりますので、薬剤師MRの方はぜひ転職の一つの選択肢として参考にして頂けますと幸いです↓↓
「他部署への異動届」を出してスキルアップを行う
リストラが断行されたとしても自社に残るという選択肢もあります。しかし一度リストラを行った会社は2回目3回目と何度もリストラを断行する傾向にあります。
今回のノバルティスファーマもこの3年間で3度目となりますし、サノフィやMSDは5回も6回もリストラを断行し、耐えに耐えかねて辞めていく方を多くの方を私は見かけて参りました。
会社はもはや終身雇用は約束してくれません。1社にしがみつき続けるという行為そのものが大変リスキーなのです。
ただそれでも「今の会社ステップアップしたい!」とうことであればMRを今すぐ諦めることです。リストラが断行された時に真っ先にターゲットになるのはMRです。MRを続けていることがリスキーなのです。
MRを諦める=他部署へ異動願いを出す、ということです。
本来であれば他社へ転職して他社のMR以外の部署を経験することが転職市場では優位なのですが「今の会社でステップアップしたい!」ということであれば、他部署へ異動して幅広い仕事を覚えるべきです。
私は同じ会社、しかも生え抜きでずっと同じ会社に居続ける事が今のご時世では一番リスキーだと考えております。
この流動的な時代に一社での経験がないことが転職市場では「変化に順応できない人材」だと評価されてしまうのです。
なので本来は転職してスキルアップすることをおすすめするのですが、それでもできない事情がお有りかと思います。であればMRをすぐにでも諦めて他部署へ異動願いを出すべきです。
他部署を経験しておくことは、いざリストラが断行され辞めざるを得なかった時には大きなリストラ対策にもなります。もうお分かりの通りMRだけでは転職の時に潰しが効かないからです。
2021年ノバルティスが3年連続の早期退職断行!何度もリストラが行われる背景は? まとめ
製薬業界に勤めている限り、もはやリストラは避けることのできないリスクとなりました。
ただ製薬業界で成功されている方(順当にキャリアアップされている方)の大半は、早めに手を打たれておりますし、実際に順当なキャリアを歩んでいると自負している私も、会社の将来性を常に把握して早めに先手先手で手を打って参りました。
もはや「大学担当経験MR」「スペシャリティ領域経験MR」「オンコロジー領域経験MR」だからと言って製薬業界でMRとして生き残れる時代ではなくなりました。
パイプラインが豊富なノバルティスファーマですらリストラを断行するのですから、ご自身の会社が「安泰」の今でも上記でご紹介した対策を早めに講じるべきです。
少しでも感じることがありましたら、先手先手で手を打ちましょう。皆様の未来が明るいものになるためにも!
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