『キムリア』スズケン一社流通から見る今後の製薬会社と医薬品卸

製薬会社の将来性
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今話題のノバルティスファーマの新たながん治療薬CAR-T細胞療法『キムリア』を取り扱う流通業者(医薬品卸)がスズケン一社限定になったとのニュースが発表になりました。

スズケン CAR-T細胞療法・キムリアの国内流通を受託 | ニュース | ミクスOnline

近年希少疾病医薬品などのスペシャリティ品目を中心に製薬会社各社は、取り扱ってもらう医薬品卸を一社限定にする動きが加速しております。また昨年末には業界を騒がせたノボノルディスクファーマの『取引卸の絞り込み』も有りました。関連記事↓

ノボノルディスクファーマの取引卸絞り込みが意味するものは?
ノボノルディスク ファーマが2018年10月のリストラに続き、取引卸の絞り込みを行うという衝撃的なニュースを発表致しました。オーファンドラッグでは取引卸を1社限定にするという話は最近良く有りますが、突然取引を中止にするというのは前代未聞です。果たして今回のノボノルディスクの取引卸絞り込みが意味するものは?

この流れは今後更に加速すると思われ、医薬品卸各社も対応に追われております。今回の『キムリア』スズケン一社限定取引から見る、今後の製薬会社と医薬品卸について考えて参ります。

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ノバルティスファーマの『キムリア』とは?

一患者あたり約3,350万円の薬価が付いたノバルティスファーマの『キムリア点滴静注』

「キムリア」の適応症は『再発難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病』と『びまん性大細胞型B細胞リンパ腫』です。国内初となるキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法として世間の注目を浴びております。

 

「キムリア」は、患者自身のT細胞を遺伝子導入により改変し、体内に戻すことで、CD19と呼ばれる抗原を細胞表面に発現するB細胞性の腫瘍(B-ALLとDLBCL)を認識して攻撃する新しいがん免疫細胞療法になります。「キムリア」による治療は、継続的な投与を必要とせず、投与は一度のみとなります。

 

その「キムリア」が患者に投与されるまでの流れとしては、

①医療機関で患者からT細胞を採取し、空路でアメリカのノバルティス製造施設に運んで遺伝子導入

②その後兵庫県にあるノバルティス篠山工場に運ぶ

③篠山工場から医療機関までは医薬品卸のスズケンが届ける。

という流れになっており、製造から保管、そして流通に到るまで細心の注意を要する薬剤であることがお分かり頂けると思います。

製薬会社が医薬品卸を限定する意味とは?

今回の「キムリア」に限らず、製薬会社各社は数年前から新薬発売時に取り扱う医薬品卸を1社限定、もしくは地域で1社ないし2社などに限定するところが増えてきました。その傾向が特に強いのがオーファンドラッグなどのある程度患者が限定されているような疾患の薬剤「スペシャリティ品目」や「キムリア」のような「オンコロジー製品」となっております。

 

昨年末にはインスリンメーカーのノボノルディスクファーマが「取引卸の絞り込み」を行い、全国数社の医薬品卸との取引を中止致しました。製薬会社が医薬品卸を限定する意味とはどのようなものなのでしょうか?

 

1つは1社限定取引にすることで「価格競争」が発生しないことです。製薬会社各社としては原価の高い「スペシャリティ品目」は、卸間競争が起きて価格が乱れて薬価が下がるのを止めたい!という思いがあります。1社限定取引にすることで、価格が乱れる可能性が極めて低くなり、適正な価格で医療機関に収められて、かつ薬価も維持できる、そのような理由が垣間見られます。

 

もう一つの理由が、「スペシャリティ品目の品質管理の難しさ」があります。今回のキムリアのように厳格な温度管理が必要な品目は、全ての医薬品卸が取り扱える物流倉庫を整えてはおりません。製薬会社側としても、品質管理を厳格にしてくれ、医療機関に万全の体制で届けてくれる医薬品卸でないと取引ができないという事情もあります。

医薬品卸も物流で他社との差別化を展開!

「キムリア」のように「厳格な品質管理」が求められる製品を扱えるよう、また1社限定医薬品卸に選んでもらえるように医薬品卸各社も「スペシャリティ品目の厳格な管理から安全な配送まで」を整え始めております。

 

医薬品卸大手各社は、別会社を設立し、競合他社との差別化を図ろうとし、オーファンドラッグの流通を担う子会社を設立しております。メディセオ「SPline」(エスピーライン)スズケン「エスディコラボ」東邦薬品「オーファントラストジャパン」アルフレッサ「エス・エム・ディ」といった会社を設立し、それぞれが特色を生かした物流体制をアピールしております。

 

今後プライマリーの薬剤が枯渇し、次々とジェネリックに置き換わっていくことが想定される中、製薬会社各社は「スペシャリティ」もしくは「オンコロジー」製品の開発にシフトしてきております。そして「スペシャリティ」と「オンコロジー」は高薬価であることや、ほとんどが急性期病院での採用となります。1社限定取引卸に選ばれることで、医薬品卸としては、会社全体の売り上げにも大きな影響を及ぼしますので、何がなんでも欲しい!というのが医薬品卸の本音でしょう。

医薬品卸から見た一社限定取引のメリットとは?

製薬会社各社が最近注力している『スペシャリティ品目』は、高薬価な製品が多いのため、どの医薬品卸も欲しがりますし、新製品が出るたびに病院帳合の奪い合いが起こります。そこでまずは一社限定取引卸に選ばれることで、高額製品を独占出来ます。

 

また『キムリア』のような製品が病院に採用になったは良いが、実際にはその病院が『スズケンと取引していない』ということもあります。ここはスズケンにとっても取引が開始できる、それに伴って他の製品を扱える絶好のチャンスにもなります。

 

また「1社限定取引卸」に選ばれることで、間違いなく得意先からも「メーカーから選ばれた医薬品卸」として信頼度が増します。最近取引医薬品卸の絞り込みを行ったノボノルディスクファーマですが、その取引を中止された医薬品卸のMS曰く、取引が中止された影響が得意先に与えるインパクトがかなり大きいとおっしゃってました。「外された」ことで得意先からの信頼はかなり下がったとのことです。「取引卸の限定」は得意先の信頼度=取引にも大きな影響を及ぼしそうです。

『キムリア』スズケン一社流通から見る今後の製薬会社と医薬品卸 まとめ

昨年のノボノルディスクファーマの「取引卸の絞り込み」から始まり、今回の「キムリア」のスズケン1社限定取引。この流れはスペシャリティ製品やオンコロジー製品が多く上市される今後、更に続きと予測されております。

 

これら一連の流れは我々製薬会社MRが関与する余地がないところで話が進んでおりますが、1社限定取引は、医薬品卸が得意先との取引がないなどの問題も出てきます。そのような場合、製薬会社MRとしては病院の情報が取りにくくなるなど、活動がしづらくなるデメリットもありますよね。

 

しかし製薬会社にとっては、「医薬品卸の帳合問題に巻き込まれなくてもすむ」「価格を乱されなくてもすむ」などのメリットもあります。この流れは続きますので、今後も製薬会社と医薬品卸の新たな変革について注目して参りましょう!

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