2019年に入っても衝撃的なニュースが多い製薬業界。最近では国内中堅製薬メーカーである協和発酵キリンと鳥居薬品がほぼ同時にリストラ(早期退職)を発表致しました。
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近年、外資系や内資系大手製薬会社では頻繁に行われてきたリストラ(早期退職)ですが、国内中堅製薬メーカーでの相次ぐリストラの発表は、業界にお勤めの方はどなたでも衝撃を受けたのではないでしょうか?
それは製薬業界内では国内中堅製薬メーカーは社員に優しい、 というイメージが強かったからです。私も以前は内資系国内中堅メーカーで勤めてましたが、近年内資系中堅メーカーは、市況は厳しい中で昇給ストップや、福利厚生の削除など、給与面でのカットは行われてました。
しかし市況は厳しい中でもリストラだけは、去年発表された大正製薬を除いてどの製薬会社も行なってこなかったのです。そこで今回の協和発酵キリンと鳥居薬品のプレスリリースです。ついに来てしまったか!というのが私を含めて、製薬業界にお勤めの方のご印象だったと思います。
私は今回の協和発酵キリンと鳥居薬品のリストラ発表を引き金に、今後国内中堅製薬メーカーのリストラが進むと見ております。そして製薬会社にお勤めの方のなら誰しもが、突然訪れるリストラへの備えをしておく必要があります。その理由と、リストラへの備えについてご紹介致します。
薬価制度抜本改革とジェネリック80%国策化が製薬業界へ与えた影響
2018年に始まった薬価制度抜本改革による、新薬創出加算品目の削減と薬価の引き下げ、そしてジェネリック80%国策化により、先発品を扱う多くの製薬会社は大打撃を受けました。これによって2018年より多くの会社でリストラ(早期退職)が行われました。
わかっているだけでサノフィ・MSD・大正製薬・日本ベーリンガーインゲルハイム・ノボノルディスクファーマ・ノバルティスファーマ・アステラス製薬・エーザイ、そして2019年に入りついに国内中堅メーカーである協和発酵キリンと鳥居薬品がリストラ(早期退職)を発表致しました。
一昔前まではたとえ特許が切れても処方元の医者に泣きつけば、ジェネリック化を阻止できましたが。しかし現在は後発品が存在する医薬品であれば調剤薬局で患者への意思確認の上、ジェネリックに変更が可能という構図が出来上がってしまったため、特許が切れた医薬品は必然的に80%以上がジェネリックに変わってしまうようになってしましました。
特許が切れた医薬品が主力の製薬会社は、その後新薬を出し続けない限り、自社の売り上げの挽回はすることが出来ませんが、新薬も枯渇しつつある今の現状だと、今後のパイプラインが薄い製薬会社はリストラ(早期退職)に踏切らざるを得ないという状況に追い込まれているのが、今の製薬業界を取り巻く状況です。
先発メーカーはこれから「地域フォーミュラリー」がジェネリック以上の脅威に
みなさま最近良く耳にする「地域フォーミュラリー」という言葉をご存知でしょうか?これは製薬業界に勤めている方なら知らなければならないことです。今後これが先発品メーカーの存在を脅かすことになるのは間違いありません。
そもそも「フォーミュラリー」とは何のことでしょうか?地域フォーミュラリーとは、政府が医療費削減、公的医療保険制度の持続可能性の視点から指向しているもので、「医薬品の有効性・安全性など科学的根拠と経済性を総合的に評価して、医療機関や地域ごとに策定する医薬品の使用指針のこと。良質で低価格な医薬品の使用指針に基づいて、標準薬物治療を推進することを目的としております。
なんか良く分かりませんよね。簡単に申し上げると「国が医療費高騰対策として、ジェネリックがない先発品でも、対抗品でジェネリックが発売されていれば、積極的にそちらへ変えていく」と言うものです。
日本で最初の「フォーミュラリー」を導入した「聖マリアンナ医科大学」では、原則として後発医薬品を中心に2剤までを採用。有効性や安全性に差が認められなければ新薬の採用は認めておりません。また2014年に一部の薬効群で運用を開始し、その後数年間で9薬効群まで拡大し、年間約3700万円の医療費を削減したと言われております。
また「地域フォーミュラリー」の導入もすでに静岡県と山形県で始まっております。山形県での運用事例が出ておりました↓
地域フォーミュラリー運用開始‐山形県の北庄内地域で地域医療連携推進法人が策定
この山形の事例では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)とα-グルコシダーゼ阻害薬の2薬効群が選定されました。先発薬も含めて同種同効薬の有効性、安全性、経済性を総合的に検討した上で推奨薬を選定されておりますので、患者さんにとっても納得できるものとなっております。
PPIでは第一推奨薬をランソプラゾール錠(武田テバ、東和、沢井)、ラベプラゾールNa錠(サンド、日医工、杏林)、オメプラゾール錠(東和、アメル、日医工)に設定。α-グルコシダーゼ阻害薬では第一推奨薬をボグリボースOD錠(沢井、東和、高田)、ミグリトール(沢井、東和)が設定されております。つまりここでは後発品のないPPIでは、現在年間の医薬品売り上げランキングでも上位にくる「ネキシウム」や「タケキャブ」といった薬が餌食になります。
地域フォーミュラリーは患者さんにとっても、生活習慣病のような飲み続けることが多い薬剤が選定されていることから、どうせ同じような効果なら患者負担が安いほうが良い!と言うメリットがあります。いつかはこんなことが起こると思っておりましたが、ついにこんな時代がきてしましました。
今後プライマリーの薬剤がメインの製薬会社は薬価制度抜本改革以外にも地域フォーミュラリーが脅威になることは間違いありません。特に生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症)の薬剤がメインの会社は打撃を受ける可能性はかなり高いと言えます。
突然会社から発表されるリストラへの備えを!
当ブログで繰り返し述べて参りましたが、会社から突然リストラが発表され路頭に迷う多くの方を私は見て参りました。今は一部の製薬会社を除いて、上記でご紹介した医療業界を取り巻く環境から、多くの製薬会社がいつ突然リストラが発表されてもおかしくない状況です。
しかも今まであまりリストラを行わずに社員の雇用を維持してきた国内中堅メーカー(協和発酵キリンと鳥居薬品)がリストラを行ったことで、他の国内中堅メーカーが追随してリストラを行う可能性が十分にあります。
リストラは「45歳以上入社5年以上」という会社が多くなっておりますが、最近のリストラを見ていると昨年の日本ベーリンガーインゲルハイムでは「30歳以上入社1年以上」、鳥居薬品では「入社2年以上」と20代30代でもリストラの対象になっております。
「自分は若いから大丈夫!」と思っている時代は終わりました。また「同じエリアでの勤務歴が長い」「同じ部署(MR)しか経験していない」という方もリストラなどの「環境の変化に順応出来ない」と見なされ、リストラの対象になりかねません。
また過去の記事でも繰り返し記載しておりますが、会社は「リストラ(早期退職)はあくまでも手上げ制、辞めるか辞めないかの判断はご自身で判断ください」としておりますが、現実はそう甘くありません。リストラ(早期退職)発表の半年ほど前からすでにリストラ候補のリストアップが行われております。そこで①絶対に残って欲しい人②手あげしたら容認する人③絶対に辞めて欲しい人、と3分類、もしくはもっと細かく5分類化されているといわれております。
特に③の絶対に辞めて欲しい人に分類されてしまった方への仕打ちは悲惨です。①の絶対に残って欲しい人の上長との面接は1−2回で終わるのが通常ですが、③の絶対に辞めて欲しい方へは、本人が「辞めます」というまで繰り返し面接が行われます。現実はそう甘くありません。「自分は大丈夫!」と思っている方ほど、リストラの餌食にあっているのを私は多く見て参りました。
いざという時になんの備えもしておらず、路頭に迷わないためにも今はどの世代の方にも「リストラの備え」は必ず必要です。製薬業界にお勤めの方は、今すぐ備えをしましょう!では備えとは?ということですが、これは以前から記事でご紹介しておりますので、下記の対策をぜひご参考にしてください!
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特別退職金を貰ってリストラ(早期退職)に手を挙げるという選択肢も考える
最近のリストラ(早期退職)の特別退職金(割増金)の話を伺うと、通常の退職金+月の×60ヶ月なんて話はザラです。特別退職金は勤続年数が長ければ長いほど上乗せされるのが通常ですので、長く勤めた方ほど多く貰えます。
現在の役職によっては1億円近い退職金が貰える方がおります。これは当ブログで今まであまり推奨してきませんでしたが、この莫大な退職金を片手に、新たな人生をあゆむというのも一つの手です。
私は今まで自身の4回の転職経験から、製薬業界で働き続ける事や、そのためのリストラ対策を述べて参りましたが、最近のご時世を見てみるとそうは簡単に行かなくなってきているのが現状です。私も実際にリストラ(早期退職)の生の現場を体験・目撃致しました。将来を路頭に迷う方も多く見て参りました。しかし一大決心をし、莫大な退職金を片手に会社を辞めて、夢であった会社を起こされた先輩がおります。
また他の先輩は、奥様が正社員である程度の収入があるため、ご自身がリストラ(早期退職)のタイミングで辞めて、その退職金を元にデイトレーダー(株の運用で生計を立てる)に転身された方もおります。その方は元々趣味が株の運用でしたので、退職金を元に趣味を仕事にされました。またある先輩もリストラ(早期退職)のタイミングで人生を見直し、地域町おこし隊に入り、田舎での生活と仕事に転身された方もおります。
このように特別退職金を元に製薬会社で働くこと以外にも生きる道を見つけて多くの方がご活躍されております。しかしそこに踏み込むにはそれなりの前もった覚悟と準備が必要になります。もはや製薬業界に限らず、終身雇用制度は崩壊しており、同じ企業に一生働き続けることが難しい時代に突入しております。「自分は若いから大丈夫!」と思っていると大間違いです。若ういちから「5年後、10年後の自分の姿」を想像し、第二の人生を考えておくことをおすすめいたします。
フォーミュラリーが今後製薬会社に与える影響とは?!まとめ
製薬業界を取り巻く環境は日々変化しており、どの会社が将来有望かとは言えない時代になりました。最近では卸に行っても、病院に行ってもリストラ(早期退職)の話題が尽きることはありません。医薬品市場もジェネリックの影響で伸び悩み、明るい話題は多くありません。
そんな右肩下がり時代でも、バイオ医薬品やオンコロジー製品を扱う製薬会社の台頭が目立ってきております。ただそれら製品を扱う製薬会社のMRですら、現在の市況を鑑みると将来が不安だとおっしゃいます。
ただ先行き不透明な時代でも、ご自身のスキルを磨かれている方、前向きな方、日々移り変わる変化に対応できる方、は今後もこの医者と薬剤師、そして患者さんの治療に直接貢献できる、やりがいのあるこの仕事で、生き残って行けると言われております。
今後起こり得る変化へ対応するために、上記でご紹介致しました「備え」を確実に実行しておきましょう。皆様の未来が明るいものになるように!!
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