「今のMRにサイエンス力は必要か?」
近年添付文書に記載されている情報以外のMRの情報提供を厚労省が監視する「医療用医薬品の広告活動監視モニター事業」や、2019年10月に本格施行された「医療用医薬品の販売情報提供ガイドライン」の影響でMRが情報提供出来る範囲が以前に比べてかなり狭くなりました。
以前はMRの主観や近隣医療機関の先生方の処方感覚、そして適応外使用や自社製品に関連しない文献提供など、なんでも出来ました。
しかし今のMRは情報提供が「自社製品に関連するもの」さらに「添付文書に記載されていること」に限定されてしまいました。
もちろん能動的に文献を印刷して持参するなど、コンプライアンス違反となり、ほぼ全ての会社が懲戒系の一発アウトな事例です。
しかもここに来て製薬会社MRは新型コロナウイルス感染拡大により、全国ほぼ全ての医療機関への訪問が出来なくなっております。
医師や薬剤師の先生への情報提供は「デジタル」や「リモートディテール」へと移行。提供出来るコンテンツはどの製薬会社も「会社が定めたコンテンツ」に限定されております。
そんな状況の中、当ブログの読者さんから「今のMRに、サイエンス力は必要なのか?」というご質問を頂きました。
新型コロナウイルスの影響でMRの仕事内容も「新しい仕事様式」へ確実に移行致します。これを踏まえた上で「今のMRにサイエンス力は必要か?」について考えて参ります。
販売情報提供ガイドラインと医薬品モニター制度がMRにサイエンス力を必要としなくなる?
販売情報提供ガイドラインと医薬品モニター制度の適用によって、現在MRの情報提供はガチガチに縛られております。
MRが医師や薬剤師の先生方に情報提供できる内容としては「添付文書に記載されている内容」もしくは「会社指定のパンフレットの内容」のみです。
適応外使用の情報提供や、他の医師の処方感やMR個人の主観、医師や薬剤師の先生方から依頼されていない文献の提供はもってのほかです。
情報提供の中身に縛りが多い中「今のMRに果たしてサイエンス力は必要か?」と言うことになりますが、私は有限な時間を使ってまでサイエンス力を高める必要は全くないと考えております。
従来全てMRが賄っていた「サイエンス的な要素」は今、どの会社もMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)を増員して、MSLの方が「適応外のデータ」について代わりに説明してくれます。
特に新型コロナウイルス感染拡大の今、医師への情報提供は「デジタル」や「リモートディテール」が主流となっております。
そして「デジタル」や「リモートディテール」も大義名分がない限り、なかなか依頼しづらいとも聞いております。そこでMSLを有効に活用し、一回でも多く医師や薬剤師の先生方との面会の機会を持つべきです。
下記にご紹介致しますが、今「サイエンス力」を磨くのであれば、違うスキルを磨いた方が得策です。と言うのも新型コロナウイルスの影響で製薬会社MRのリストラが今後加速する可能性が高まるからです。
ただでさえ今回の新型コロナウイルスの訪問自粛によって「MR不要論」が高まっているのと、今のところ業績に影響がない製薬業界も今後多少の打撃を受けることが予測され、リストラが加速しかねません。
今自社製品に関連する「サイエンス力」を高めても、いざ自分の会社でリストラが発表されたら元も子もありません。であれば他社に行っても通用するスキルを高めた方が良いと言うのが、私の経験から言えることです。
私の身の回りではやたらと「サイエンス力」に拘っているMRがおります。
レスポンスのスピードを高めるため、MSLが賄うような学術的な部分を全て一人でやろうとしているのですが、販売情報提供ガイドラインや医薬品モニター制度による監視が厳しい中、そのこと自体がリスキーです。
「サイエンス力」を高めることによって自分の首をしめることになりかねないのが、今のMRを取り巻く環境です。であれば必要以上に「サイエンス力を高める必要がない」と言うのが私の見解です。
サイエンス力を磨く前に、まず先生から頼られるMRを目指そう
ただ「サイエンス力」が全く必要ない訳ではありません。ある程度のサイエンス力は必要だと思います。
販売情報提供ガイドラインや医薬品モニター制度の適用によって、自社製品に関わる会社が定めた資料やスライドの提示のみが認められているはいるものの、医師や薬剤師の先生方から「こんなデータや文献ある?」と言われるのが通常のMRです。
しかし今のMRを取り巻く環境を考えれば、先生方から「仕事を依頼」された時に、それに応えるデータ検索スキルと、依頼に応えることの出来る社内人脈活用スキルがあればそれで十分です。
ただ日頃から医師や薬剤師の先生方との関係性が出来ていないと「仕事を依頼」されることはありません。
いくら「サイエンス力」を鍛えても基本となる「顧客との関係」が出来ていないと「サイエンス力」も生かすことも出来ません。
「サイエンス力」を強化したとしても販売情報提供ガイドラインと医薬品モニター制度の環境下では、それが仇となる可能性もあります。
なので「サイエンス力」を強化するよりも医師や薬剤師の先生方との「人間関係」を強化する方が遥かに大事です。
と言っても今は新型コロナウイルスの訪問自粛の最中・・今更医師や薬剤師の先生方との関係を築きましょう!と行っても無理がありますが・・
もし医療機関の訪問規制が解除された暁には、人間関係度強化を早期に行う必要があります。今後従来のような定期訪問は出来なくなります。
上述した「オンライン面会(リモートディテール)」と「デジタル」での情報提供が今後メインになるでしょう。そうなった時に「頼られるMR」以外は淘汰されることになるでしょう。
MRがサイエンス力を磨くなら、将来の為に違うスキルを磨いた方が良い
「サイエンス力よりも医師や薬剤師の先生方との人間関係力を強化した方が良い」と言うのが今後のMR力を高めるのには必要です。
一方今後製薬業界で生き残っていくためには、必要以上のサイエンス力を磨く必要はなく、いつ訪れるかわからないリストラに備えて違うスキルを磨く方が得策だということを私は身を持って体験致しました。
当ブログで再三ご紹介しておりますが、私は以前在籍した会社でリストラの生現場を経験致しました。いざリストラが断行された時には「サイエンス力」が全く効力にならなかったことを身を持って実感致しました。
いざ会社からリストラが断行された時に「残って欲しい人材」は「サイエンス力」のあるMRではなく、MR以外の部署や他社経験が豊富な「キャパシティの広いMR」や組織をまとめることの出来る「リーダー力のあるMR」です。
新型コロナウイルスによって製薬業界への影響は今のところ軽微ですが、「訪問規制」によって先行き不透明かつMRが今までと同じ数が必要だとは到底思えません。
今後全国全てのMRがリストラの危機にあると言っても過言ではありません。
いざそうなった時に路頭に迷わないためには「サイエンス力」を磨くよりも「将来のための自分のスキル」を磨いた方が良いと言うのが、リストラも転職も経験した私の見解です。
では「将来のための自分のスキル」とは?と言うことですが、それは
①どこの部署や他社に行っても使える資格を取得する
②MR以外の他部署に異動願いを出して、製薬業界でのキャパシティを広げる
③英語の勉強をする
④副業を行う
新型コロナウイルスの感染拡大によって政府も「新しい生活様式」を取り入れるようにと喚起してます。今後の製薬業界に必要なスキルは上記の4点だと強く感じております。一つ一つ解説して参ります。
どこの部署や他社に行っても使える資格を取得する
私も以前は「MR認定試験」と「普通自動車免許」しか持ってませんでした。
以前在籍していた会社でリストラが断行される前に強い危機感を感じて「どの部署に行っても活用できる資格」「他社に行っても必要とされる資格」を取得いたしました。
「サイエンス力」は資格ではなく能力です。確かに能力も必要なのですが、人の視覚に訴えるのには「資格」と言う目に見える証明が必要なのです。
もちろん資格は持っているだけで「資格ホルダー」になってはいけません。きちんとその資格を仕事や組織のために生かせると言うことを説明出来なければなりませんが、昇進試験や転職では役に立ちます。
迫りくるリストラや社内の規模縮小に向けて「サイエンス力」よりも「他部署や他社に行っても使える資格」取得を目指して勉強される方が、得策です。
「製薬会社MR」に必要な資格について記事を書いてますので、ぜひ参考にして頂けますと幸いです。
MR以外の他部署に異動願いを出して、製薬業界でのキャパシティを広げる
当ブログでも再三警告しておりますが、もはや「MRの経験しかない」と言う方は、リストラが断行された時にいくら「サイエンス力」があったとしても真っ先に「肩叩き候補」です。
基幹病院や大学病院の担当歴やスペシャリティ・オンコロジー の経験があればまだしも、プライマリー領域の経験しかないMRの方はもっと危険です。
新型コロナウイルスの影響で、製薬業界はさらに流動的になることでしょう。そうなった時にキャパシティがない方ほど真っ先に淘汰されます。
なのでMRの経験しかない方は、早いうちに他部署への異動願いを出されると良いでしょう。
私の身の回りでもいち早く危機感を感じて、本社営業部門やマーケティング、学術担当、特約店担当などに異動希望を出して、今では自社で出世、もしくは他社でご活躍されている方がおります。
他部署の経験がある方はリストラや転職にはかなり有利だと言うのが、私の経験からも強く言えます。新型コロナウイルスの影響で今後MRはさらに減少致します。製薬業界に残りたいのであれば、早めに手を打ちましょう。
英語の勉強をする
「英語ができるだけで仕事の幅がかなり広がる」
これは外資系製薬会社を3社経験した私が身を持って体感したことです。英語が出来るだけで部署を跨いでの仕事の幅もかなり広がります。つまりどの部署にも行けてしまう訳です。
「サイエンス力」を高めるために勉強するなら今後のために「英語力」を高めた方が得策です。
と言う私は外資系製薬会社に勤めながらも英語レベルは小学生レベルです・・ なので新型コロナウイルスによるテレワークを活用して英語を勉強しまくってます。
英語が小学生レベルの私が勉強しているその英語勉強方法については、別の記事に書いてますのでこちらを参考にして頂けますと幸いです。
副業を行う
もはや会社は終身雇用を約束してくれませんし、新型コロナウイルスの影響で割と安定な製薬業界に勤めていたとしても先行きが不安な状況です。
特に新型コロナウイルスに無力なMRは「これで普通に給料もらっていて良いのだろうか?」と思っている方も少なくないはずです。
そんな先行きが不安な状況でやっておくべきことが「副業」です。
2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、製薬会社の中でも「副業」を解禁するところが増えてきました。これに乗らない手はありません。
今「サイエンス力」を高めるよりも、先行きが不安な将来のために「副業」に時間をかけるべきです。
「副業」をやることによるメリットとしては、もちろん金銭的な余裕が生まれることに加えて、心にもかなりの余裕が生まれます。そして万が一先行き不安定になったとしても、後ろ盾があるので安心感が全然違います。
と言う私は当ブログ以外にも趣味のブログを複数所有しており、新型コロナウイルスによる訪問自粛で支給されない日当分以上の収入を「副業」で得ております。
つまり「副業」はいざと言う時のための「リスク回避」でもあります。
やたらと「サイエンス力」に拘っているMRがおりますが、世間の「副業」に対する考え方が緩まっている今、テレワークの時間を「副業」に当てるべきです。
私の「副業に対する考え方」を180度変えてくれ、「副業」に踏み出す一歩を与えてくれた「良書」があります。その本について記事を書いてます。「複業で成功する」を読めば私の言っている意味が理解出来るかと思います。
今のMRにサイエンス力は必要か?まとめ
結論を申し上げますと、MRは必要以上に「サイエンス力」を高める必要はない、医師や薬剤師の先生方から問い合わせがあった時に、それに応えられるスキルを身につけておくだけで良い、と考えます。
「サイエンス力」を必要以上に高める時間があるなら、くるべきリストラに備えて「他部署や他社に行っても通用するスキル」と「英語力」を磨く、「副業」に取り組む、といったことを行うのが得策だというのが私の見解です。
新型コロナウイルスの影響で「MRが不要」と言われ、「リモートディテール(オンライン面会)」と「デジタル」が浸透する中、今まで以上にMRが減少することは目に見えております。
いざリストラが断行された時、路頭に迷わないためにも今は「サイエンス力」を磨く時ではなく、「将来の自分も守る」ことに時間を費やすべきではないでしょうか?
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