ここ数年製薬会社に限らず医薬日卸もリストラの話題が堪えなくなってきました。2022年2月には「東邦薬品の早期退職」 について医薬情報誌「RISFAX」が発表。
「RISFAX」のツイッターからは、計画が漏れてしまって、急遽現場への配信を延期したとのことですが、この発表から今この記事を書いている2022年9月までの7か月間、特に進展はありません。
さぞかし東邦薬品のMSは戦々恐々としていることでしょう。ただでさえジェネリック医薬品が端を発した出荷調整問題に終わりが見えないMSとしては、仕事に対するモチベーションが上がらない日々が続いております。
東邦薬品が早期退職(リストラ)を断行するとなると、大手医薬品卸ではメディパルホールディングス(メディセオ・エバルス・アトル)・スズケン(サンキ・アスティス・翔薬含む)に続いて3社目となります。
東邦薬品も地方に幾つかのグループ会社を持っております。共創未来グループとして北陸東邦・セイエル・幸燿・九州東邦・沖縄東邦・酒井薬品があり、記事を読む限り、他社同様にこれらのグループ会社も対象になるとは、今の所オープンにはなっておりません。
昨今の医薬品卸を取り巻く環境は製薬会社なみに決して明るくありません。ジェネリック医薬品の国策化による医薬品市場の低迷に加えて、ジェネリック医薬品の出荷調整に奔走するMSからは、ツイッターを見ても多くの嘆きが聞こえてきます。
私は元々医薬品卸MSをしていた関係で、今でも多くの元同僚と連絡をとっておりますが、午前中はほぼ出荷調整対応で潰れてしまい、得意先からも罵声を浴びせられるそうです。
医薬品卸として様々な製薬会社の薬をPRし、より良い薬を確実に届ける、または安定供給させるという本来の仕事が全く出来ていないと嘆いております。
昨今の医薬品卸の経営状況と未来への投資を見ていると、製薬会社同様に早期退職(リストラ)の危機に瀕していると言っても過言ではありません。
そんな医薬品卸の20代30代の若いMSにはこの時代だからこそ更なるステップ、転職を強くおすすめ致します。
その理由について医薬品卸MSとして、また内資系と外資系製薬会社でMRと内勤職を経験した私が「転職を強くすすめる理由」について解説致します。
医薬品卸の現状
医薬品卸の決算は年々厳しくなってきております。2021年4-9月期決算の大手医薬品卸4社の数字を見てみます。
単位:百万円 | |||
会社名 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 |
東邦HD | 597,963 | 1,139 | 0.19% |
メディパルHD | 1,093,089 | 9,230 | 0.84% |
スズケン | 1,053,921 | 319 | 0.03% |
アルフレッサHD | 1,141,757 | 7,021 | 0.61% |
各社データの取り方が違うため(アルフレッサとメディパルは「医療用医薬品等卸売事業」、スズケンと東邦は「医薬品卸売事業」)一概には言えませんが、販管費が5%必要だと言われている中、大変厳しい営業利益率となっております。
それはもちろん賞与にも反映されており、私の友人MSからは「ここ10年、ほとんどボーナス支給額が上がっていない」との嘆きが聞こえてきております。
そういった厳しい状況の中、コロナ禍でも医薬品卸のMSは医薬品を医療機関に届けるという社会的使命を全うされています。
ただ昨今の出荷調整への対応で疲弊しているMSも多く、「コロナ禍、出荷調整の対応など仕事量の割に合わない」と思っているMSが多くいるのが事実です。
今後医薬品の売上に活路を見出せない医薬品卸としては、医薬品卸として本来の仕事である「医薬品の物流」の構築にシフトして行っております。
医薬品の売上だけでは利益を見出せない医薬品卸は「物流」にAIを導入し、MSや配送を減らす動きにあります。MR同様、今後MSも減る一方に進むと推測します。
医薬品卸のやりがいも十分あるが・・
ただ日々社会的使命を果たしているMSですが、コロナ禍でも確実に医薬品を医療機関に届けることに「給料だけじゃない!」部分のやりがいを感じている方もいらっしゃいます。私もそう思って働いておりました。
そうです。医薬品卸MSは製薬会社MRよりも確実に医療機関や調剤薬局から必要とされております。これまで災害発生時や新型コロナの初発感染拡大時にMRはほぼ自宅待機となりましたが、医薬品卸はそうではなかったですよね。
MSは災害時でもコロナ禍でも必ず出社しなければいけません。どんな有事でも医療機関は機能しており、医薬品を届けなければならないのです。
ただ最近はそんな「やりがい」以上に果てしなく続く出荷調整問題や医薬品卸の将来性に頭を悩ませているMSが多く、「やりがい」を感じなくなってきているMSが多いように感じます。
2022年に入りリストラ以外にも、全国的な医薬品卸の20代30代MSの退職が相次いでおります。
その一番の理由がどちらかというとキャリアアップというよりは「先行き不透明な出荷調整問題」と「医薬品卸の将来性」を不安視されての退職です。
もはや医薬品業界に勤めている社会的使命感としての「やりがい」だけでは20代30代のMSは持たなくなってきているのです。
20代30代の若いMSは、今すぐにでも転職活動した方が良い理由とは
メディパル・スズケンに続き、早期退職の噂がある東邦薬品、これだけ大手医薬品卸がリストラを断行するなら、今後地方の医薬品卸でもリストラを断行する可能性は高いと見ております。
早期退職の対象年齢がほぼほぼ45歳以上となっております。しかし若いMSが対象とならないとはいえ「このまま医薬品卸に勤めたままで良いのだろうか・・」と不安な気持ちになることとお察し致します。
そこで私が提唱するのが「20代30代のMSはさっさと転職活動を始めましょう」ということです。
私が20代30代MSに転職を強くおすすめする理由は上記にご紹介したMSが「やりがい」を失っている現状、そして「医薬品卸の将来性」から、そして何よりも現在ありとあらゆる業種で20代30代の人材が枯渇し、転職市場の受け皿が多いという理由からです。
私の転職経験からも流通業のすべての経験があるMSは、どの業界からも引く手あまたなのです。そしてどの業種でも人材が枯渇している20代30代というだけで採用の確率はさらに高まります。
このまま医薬品卸で給料アップが望めないのなら、早いうちにこれまでの経験を生かしてキャリアアップされた方が後々ラクです。
気が付いたら医薬品卸1社で40代、気が付いたらリストラ断行、気が付いたら転職できる先がありませんでした、というのは先に行われた大手医薬品卸のリストラからも一目瞭然です。
20代後半30代前半と言った年齢は医薬品卸の中でもある一定の経験を積んだ中堅クラスの社員です。しかも他業界からは「喉から手が出るほど欲しい人材層」なのです。
今この機会(転職)を逃したら、それこそ地獄が待っていると言っても過言ではない現状と言えます。
医薬品卸MSでの経験は幅広い職種での活躍が期待できる
医薬品卸の20代30代MSはなぜ「引く手あまた」なのか?
それはまず流通業として物流、物の流れを学んでいること、そして営業スキルである「売り・回収・利益」をすべて習得していること、これはMRには経験の出来ないことです。
物の流れに加えて、営業としてすべてのスキルを習得していることは転職市場では最大の強みです。
一方のMRはただ自社品を売る営業活動だけ(MR活動には様々な営業スキルがありますが・・)ですので、正直他業界への転職は難しいと言われております。
2022年9月に転職エージェントに医薬品卸MSからの転職市場を伺いました。すると直近のMSの転職先としては医療関連のITや人材派遣の営業、医療機器メーカーへの転職が多いそうです。
医療業界の中でも「給料が低い」と言われている医薬品卸ですが、全業種からみるとまだ高い方です(転職エージェントもそう言ってます) 給料面とこれまでの業界スキルをかけ合わせたら、やはり「医療系」が多いようです。
20代30代の医薬品卸MSにおすすめの転職エージェント
転職をおすすめします、と言われても新卒のMSは「何から始めてよいかわからない」という方が多いこととお察し致します。まずは転職エージェントに登録しましょう。
で「どの転職エージェントに登録すれば良いのかわからない・・」という20代MSの第二新卒、もしくは30代MSの中堅クラスの方には、下記にご紹介する転職エージェントがおすすめです。
リクルートエージェント
私は地方の医薬品卸MSから製薬会社MRに転職した時に利用したのが「リクルートエージェント」(昔はリクナビエイブリックとう会社名でした)でした。
誰もが知るリクルートが運営するメジャー転職サイトですが、無料登録サイトに簡単な職務経歴書や転職条件などを入力すると、すぐにエージェントから連絡があり、後日1時間ほど面談。
「どんな職種につきたいか?」「希望職種は?」などなど聴取されました。
私が医薬品卸MSから内資系製薬会社MRに転職した10数年前は、まだ医薬品卸MSから製薬会社MRの求人はいくつか有りました。
今はMSから直接製薬会社MRの転職はタブーとされておりますが、CEO(コントラクトMR)への道はまだ多少は残っております。
話が逸れましたが、実際にエージェントとの面接から、わずか1ヶ月で内資系製薬会社MRの内定をもらう事ができました。あの時のリクナビ担当者の手際良さとレスポンスの速さに、今でも感謝しております。
医療業界の求人数も常時1,500社以上持っている、誰しもが名前を知る経験豊富な老舗エージェントですので、ぜひ無料登録しましょう。
マイナビエージェント
現在20代30代の若い人を中心に支持を得ているのが「マイナビエージェント」です。
マイナビエージェントは20代30代の若い方向けの求人を強化していると明言されており、医薬品業界の転職にも強い転職サイトです。
マイナビエージェントには20代30代の初めての転職でも安心な4つの大きな強みがあります。それは、
①転職活動のトータルサポート
②他社にはないマッチング力
③全ての業種・職種を網羅
④全国企業との信頼関係
また「マイナビエージェント」は求人を閲覧できるだけの転職サイトと異なり、業界職種に精通したキャリアアドバイザーからの転職活動アドバイスや転職ノウハウなどの情報提供を受けられるサービスがあります。
医薬品卸MSの幅広い経験を生かした幅広い職種が選択できる可能性がありますので、ぜひ無料登録しましょう。
ただ転職するにしても初めの会社は3年は新卒採用の会社に勤めたほうが後々良い
20代30代に転職を強くおすすめして参りましたが、新卒で入社してすぐに辞めてはいけません。
医薬品卸は近年労働環境が大きく変化致しました。特に残業やハラスメント面は地方の医薬品卸でも厳しくなったと聞いております。
なので、医薬品卸に就職してブラック企業というのはほぼないと推測できますが・・それでもよっぽどブラックではない限り、どんなにつらくても3年はまず働いてみるべきです。
なぜ3年なのか?上記のようにブラックな理由を除いて、すぐに辞めてしまうと転職する際に「どうせウチにきてもすぐにやめてしまうんだろうな・・」と思われてしまうからです。私の肌感覚だとある一手の目安が3年です。
特に短いスパンでの転職は年を重ねるごとにデメリットしかありません。まずは3年我慢して社会人として、また業界の仕事を一人前になるまで覚えてから転職した方が後々得策です。
医薬品卸で地元で働くメリットあるが・・
製薬会社MRが全国転勤なのに対し、医薬品卸では地元に勤めている方が多いのではないでしょうか。
特にそれが地方卸では顕著で、就職時に「地元を離れたくない」という理由で地方の医薬品卸を就職先に選んだ方は多いはずです。私もその理由で新卒採用入社したその一人です。
「地元の企業で転勤なしで働ける」がまさに医薬品卸で働くことの最大のメリットではないかと思います。
希望勤務地が叶うこともある転職もありますが、多くの場合異動は付き物と思ってよいでしょう。ただ私の経験からも20代30代のうちは色々な土地で色々な文化や人となりを感じたほうが、これも後々得策です。
よっぽど今いる土地から離れられない理由があるなら転職はおすすめ出来ませんが、地元愛が強すぎたらいつの間にかリストラが断行されたといった時にはすでに時遅しです。
そういう私は地元から離れたくなくて地元の医薬品卸を就職先に選びました。ただ当時付き合っていた今の妻よりも給与が低くて「これで結婚したら養っていけるのだろうか・・」と感じておりました。
また当時から「医薬品卸の将来性」に不安を感じており、20代半ばに転職を決意、地元を離れる覚悟を決めて内資系製薬会社に転職致しました。
アラフォーの今、あの時の転職は間違いではなかったこと(まだ地元医薬品卸で奮闘している同期にも「俺も早く辞めておけばよかったよ」と言われます)、また地元を飛び出して外の世界を知ったことは自分のキャリア形成においてもプラスに働きました。
20代30代MSのみなさま、転職した際の勤務地の不安や、新しい環境での不安があるかもしれません。ただずっと今の環境のままで仕事をしていると40代になった時に必ず後悔します。
リストラされて新しい環境で仕事をしなければならないと思ったら、転職活動に踏み切れるはずです。
まとめ:20代30代MSは転職市場で引く手あまたなので、これまでのキャリアを今すぐ生かすべし!
今の医薬品卸MSを取り巻く環境の継続(出荷調整問題)と今後の医薬品卸の将来性、そして流通業や営業職として幅広いスキルを持ち合わせた20代30代のMSには、転職の一択しかありません。
元MSの私を含めて医薬品業界に限らず転職したMSのほぼ100%が「あの時転職して良かった」と言ってます。
転職したMSは「医薬品卸MSとしての経験がどの業種に行っても生きる」「MSの経験を通じてやりがいを感じることができる」と仰ってます。
私はこれまでMS→内資MR→外資本社→外資MR→外資本社と4回の転職を経験しましたが、すべてのキャリアアップの礎となっているのは医薬品卸MSでの経験です。
医薬品卸の時の激務?!を4年半経験したことによって、製薬会社でのどんな業務にも肉体的にも精神的にも耐えられました(笑)
医薬品卸MSでの経験は必ず転職に活きます。自信をもって転職活動を行いましょう。
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