2020年4月に行われる薬価改定における新薬価が官報に掲載されました。
2020年4月度改定は薬剤費ベースで4.38%の引き下げ(2019年10月薬価改定時比較)となることは以前から発表されておりましたが、製薬会社によってはプラスに転じているところもあれば、大半がマイナスに転じております(アッヴィのみがプラス)
特に業界平均4.38%以上の引き下げを受けた製薬会社は今後のパイプラインが豊富でない限り、MRの皆様にとっても将来安泰ではありません。しかも今後薬価改定は毎年行われる可能性がかなり高まっておりますので、パイプラインはまさに製薬会社の生命線であり、MRのモチベーションの源でもあります。
私は4回の製薬業界の転職の中で、会社のパイプラインが豊富な時期、パイプラインが枯渇してリストラを断行した時期の製薬会社にとって良い時期と悪い時期の両方を経験致しました。そんな私が見る20204月薬価改定から見る「製薬会社の将来性」について考えて参ります。
業界平均以上のダウン率 中外製薬と帝人ファーマの未来は?
2020年4月薬価改定のダウン率4.38%。その中でも特に注目されたのが中外製薬(下げ率9.2%)と帝人ファーマ(下げ率9%台後半)です。
中外製薬はパイプライン豊富なことで知られておりますが、昨年リストラを断行。まさにこのことを予見してのリストラだったのではないでしょうか。
中外製薬は市場拡大再算定(予測よりも売れ過ぎたことにより薬価が下がられる制度)によって主力品の抗リウマチ薬「アクテムラ」(18.5%ダウン)、抗がん剤「パージェタ」(15.0%ダウン)、血友病A治療薬「ヘムライブラ」(15.0%ダウン)が薬価ダウン。
一方の帝人ファーマは主力の抗尿酸血症・痛風治療薬「フェブリク」が市場拡大再算定を受けて14.5%薬価ダウン。
帝人ファーマは「フェブリク」が唯一100億円を超える売り上げの薬剤であり、主力品が多くない製薬会社にとって相当厳しい結果となりました。
両者のパイプラインを見てみると差は歴然です。中外製薬のパイプラインは豊富、帝人ファーマは適応追加がメインとなっております。
中外製薬のパイプライン↓
https://www.chugai-pharm.co.jp/ir/reports_downloads/pipeline/files/200130jPipeline.pdf
帝人ファーマのパイプライン↓
しかしパイプラインが豊富でも中外製薬は2019年リストラを断行致しました。そのことは記事にも書いております↓
これはパイプラインが豊富な製薬会社でも将来安泰ではない、ということを物語っている事例と言えます。
パイプラインが豊富な中外製薬でさえ先を見越してリストラを断行するのですから、主力品の大幅薬価ダウンを受けてパイプラインもない帝人ファーマのような会社は今後厳しいさが予測されます。
またジェネリックメーカーも決して安泰ではありません。厚労省は2020年9月までのジェナリック普及率80%を掲げいる影響でジェネリックメーカーにとっては今までは追い風でもありました。
しかし2020年4月薬価改定での引き下げ率を2年前の2018年4月度と比較してみると、日医工が10.7%、沢井製薬が13.0%、東和薬品が13.0%、日本ケミファ16%と軒並み大幅ダウンしております。
今後先発品でジェネリックが発売されている製品の薬価がジェネリックと同じになることを考えても、ジェネリックメーカーも安泰というわけではありません。
製薬会社にとっての生命線「パイプライン」
薬事工業生産動態統計調査によると2018年度の日本国内における薬剤費の合計は9.37兆円。
これを単純に今回の薬価ダウン率4.38%を当てはめると、4,100億円の薬剤費が圧縮される計算になり、薬価改定によって製薬業界が受けるダメージの大きさがお分かり頂けるかと思います。
上述した中外製薬のように「パイプラインが豊富でもリストラを断行する」会社はまだまだ珍しいですが、今後毎年薬価改定が行われ、薬価がどんどん下がっていく時代にはやはり「パイプラインが豊富」だということは、製薬会社として生き残る唯一の道筋です。
製薬会社MRのモチベーションは「パイプライン」になります。
日本製薬工業協会のホームページから各社のパイプラインを見て見てください。ご自身の会社もチェックしてみましょう↓↓
薬価ダウン率業界平均以上で「パイプライン」がない会社のMRモチベーションは?
2020年4月の薬価改定で業界平均4.38%以上の引き下げ率で、かつ今後のパイプラインが希薄な製薬会社は要注意です。今後薬価改定は今までの2年に一度ではなく、毎年改定がほぼ決まりかけてます。
すると主力品が頼みの綱である製薬会社は薬価はどんどん下落、ゆくゆくはジェネリックが発売された時に新薬がないと会社は一気に傾きます。
実際私は以前在籍していた会社で主力品にジェネリックが発売される直前にリストラ(早期退職)が行われました。今後のパイプラインは希薄な状況でしたので、先を見越してのリストラ(早期退職)だったのでしょう。
しかしリストラ(早期退職)が行われたことと、また会社の将来性(パイプライン)が不透明だったこともあり、社員やMRのモチベーションは大きく低下。結果リストラ(早期退職)後も多くの優秀な社員が辞めて行きました。
私もその時に辞めたうちの一人ですが、その時感じたのが「製薬会社に勤めていることのモチベーションはパイプライン」だということです。
MRの使命として「自社製品を普及させることで多くの患者さんを救いたい!」という気持ちに変わりはありません。
しかし製薬会社として将来性(パイプライン)が見越せないと、モチベーションは下がる一方なのです。会社の将来性(パイプライン)を見越すことは大事なことです。
なんとなく会社の雰囲気が悪くなる前に転職活動を!
薬価改定前や主力製品の特許切れによるジャネリック発売の前というのはなんとなく会社の雰囲気が違うな?と気がつくものです。
なので会社の将来を見越してパイプラインを確認しておきましょう、というのはそういう意味です。
会社としての将来を何も考えずにのんびりしていると、いきなりリストラの憂き目にあい、気がついたらリストラ要因で肩叩きされていた、なんてことは往々にして起こり得ることです。
もはや終身雇用が約束されなくなった製薬業界の未来は安泰ではありません。今の薬価制度抜本改革やジェネリック医薬品の80%国策化、地域フォーミュラリーなどの推進を見ていると今はやりがいを感じている製薬会社にお勤めてでも決してん安泰とは言えない状況です。
みなさん転職活動はされてますか? もはや今すぐ転職する気がなくても転職サイトや転職エージェントに登録していることは当たり前と言っても良いでしょう。
まだ何もしていないという方はまずは転職サイト・転職エージェントに登録すると良いでしょう。まず製薬会社MRの転職サイト登録の登竜門というべきサイトが「リクナビNEXT」です。
リクルートが運営しているという安心感もありますが、何よりも製薬会社の求人が多いというのが特徴です。「リクナビNEXT」について詳しく解説した記事を書いてますので、ぜひ参考にして頂けますと幸いです↓↓
2020年4月薬価改定から見る 製薬会社の将来性 まとめ
上記でご紹介した内容以外にも、2020年4月度改定では、新たに導入さえた効能変化再算定によってのノバルティスファーマの抗体製剤「ゾレア」が主たる効能「気管支喘息から季節性アレルギー性鼻炎」に変化したことを受けて、薬価が37.3%ダウン。
また市場規模の拡大を理由に市場拡大再算定の特例を受けた第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」は薬価25.0%ダウン、2月に四半期再算定として17.5%の引き下げを受けたMSDのがん免疫療法薬「キイトルーダ」は2月の薬価からさらに20.9%薬価が下がり、売れた薬剤だけ薬価ダウンの受け目にあいました。
上記の結果からも、今が良くても決して安泰という訳ではないというのがお分かり頂けたかと思います。しかしパイプラインがないと生き残っていけないというのも日本の薬価制度を取り巻く構図からもお分かり頂けたかと思います。
そして新型コロナウイルス蔓延によって多くの製薬会社が在宅勤務(テレワーク)の実施を発表しております。そこで再燃しているのが「MR不要論」。
昨今の販売情報提供ガイドライン適応によって「なんだMRが訪問しなくても何も変わらないじゃないか」と言われてもおかしくない状況です。
それに加えて毎年の薬価改定で製薬業界は先細りです。会社の固定費を圧迫しているMRは間違いなく減らされる方向でしょう。
在宅勤務(テレワーク)を良い期間と考えて、会社の将来性(パイプライン)と特許期間を必ず確認して、備えを万全にしておきましょう。
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