昨今の製薬会社MRや医薬品卸MSを取り巻く環境が大きく変化してきております。頻回訪問と過剰接待が直接「処方」に結びつく時代終わり、現在はMR不要論まで飛び出し、その結果医療機関も訪問規制を強化、MRはエビデンスなどの「ネタ」がない限り医師や薬剤師などの医療関係者へのコンタクトが取りにくい状況になってきております。
また薬価制度抜本改革やジェネリック80%国策化、さらに新薬が生まれにくい環境になったということもあり、製薬会社各社では人員削減(リストラ)も加速してきております。
そんな「医療関係者とのコンタクトが取りにくくなったこと」と「MR不足」を補う形で近年各社が力を入れ始めたのが「デジタル」です。医師や薬剤師のメールアドレスを入手し、定期的にコンテンツを配信するというものです。
今となってはどの製薬会社も「デジタル化」を加速させておりますが、足で稼ぐ医薬卸MSもついに「デジタル」を開始致しました。医薬品卸大手の「メディパル」が始めたのが「クリニカルクラウド」というデジタルコンテンツです↓
http://disclosure.ifis.co.jp/data/disclose/7c/20190129/140120190129465372.pdf
こまめに得意先に訪問して、足で稼いできた医薬品卸ですら始まった「デジタル」 製薬会社MRではいまだにこの「デジタル」を否定して、足で稼ごうとするMRも少なくありません。しかしそのような考え方はもう時代遅れです。この「働き方改革」の時代に、デジタルに乗り遅れないためにも、デジタルを用いて効率よく仕事を行う術をご紹介致します。
医薬品卸メディパルが始めたデジタル「クリニカルクラウド」とは?
製薬会社に続き、ついに医薬品卸でも始まったか!という「デジタルコンテンツ」配信サービスであるメディパルの「クリニカルクラウド」 上記でご紹介いたしましたメディパルのプレスリリースから抜粋した「クリニカルクラウド」とは、
「Clinical Cloud by MEDIPAL」には、Doctorbookが企画・制作する、製薬企業により監修された医薬品情報や、医師による講演会の模様といったコンテンツを掲載するほか、MDVが開発するレセプトデータの簡易分析システムへの連携、メディパルが保有する既存コンテンツの共有・一元化も計画しております。 これらの情報を、WEBから発信するだけでなく、メディパルグループ各社のMSによ って、定期的に医療従事者へ対面で伝えてまいります。医療機関との接点をネットとリアルのマルチチャネルとすることで、情報の有効活用を促進いたします。 また併せて、実臨床データの有効活用を目的に、当該システムを介して集積した診療デー タを分析し、製薬企業などへ提供する予定です。
やることは数年前から製薬会社各社が行っているコンテンツと変わりがないのか?といった印象ですが、1点違うのが「MSによ って、定期的に医療従事者へ対面で伝えてまいります。医療機関との接点をネットとリアルのマルチチャネルとすることで、情報の有効活用を促進いたします」という点です。製薬会社はリストラなどの人員削減で減ったMRのリソースを「デジタル」で補うというのがデジタルの主目的ですが、この文面では医薬品卸MSは「そこは違います」と言っている文言です。
デジタルで情報を流しつつ、今までの様にきちんと訪問もしますよ、という内容は製薬会社のデジタルとの大きな違いになります。また文面最後の「当該システムを介して集積した診療デー タを分析し、製薬企業などへ提供する予定です」という文言は、今後気になるところですね。
「デジタル」に乗り遅れたMRはもはや時代遅れ
一昔前の様に医療機関に週1回以上頻回に訪問し、数時間病院の廊下で立ちんぼして、製品の基本情報云々というよりも「処方の懇願」をしてきたMR。そんなMRはもはや過去のものとなりました。
しかしそんな「一昔前のMRスタイル」から未だに脱却できていない年配MRを多々お見かけ致します。そんな方こそ頻回訪問が可能であった医療期間に完全アポイント制などの訪問規制が入った瞬間に、ひたすら病院の駐車場で時間を潰す、という姿が目に浮かびます。実際に現在多くの病院の駐車場では訪問規制によって行き場を失って「病院に訪問した」という既成事実を作っている(病院駐車場のレシートで)MRを多くお見かけ致します。
医療機関の訪問規制が強化され医師や薬剤師とのコンタクトが取りにくくなった今こそ「デジタル」が大いに活用できる時代なのです。そんな時代にも過去の栄光から抜け出せずに「頻回訪問」が処方に大きな影響を及ぼす、そしてデジタルを受け入れないMRが多くいらっしゃるのも事実です。特に医薬品卸では初めて運用が始まったメディパルのMSには、その様な方が多いのではないでしょうか?
今後生き残る製薬会社MR、そして医薬品卸MSとは「会社のデジタルを使いこなすことができる」方です。デジタルを使いこなせない、デジタルに納得できない方はリストラ(早期退職)要員と言っても過言ではありません。MRやMSにとってもはや「デジタル」から逃げることは出来ない世の中の状況なのです。
「デジタル」は人員削減後の対策でもある!
「デジタル」をいち早く導入した製薬会社はどこもその後リストラ(早期退職)を行っております。今思うと製薬会社各社のデジタルの導入はリストラによって減ってしまった人員削減後のリソースを確保するための手段なのかとも思ってしまいます。
現に2018年に大規模なリストラを行った日本ベーリンガーでは1,300人いたMRが850人まで大幅に減少。450人ものMR減を製品特性や顧客の情報ニーズに応じたMRとデジタルの最適融合で対応していく、と2018年の業績発表記者会見で述べております↓
なので未だにデジタルを受け入れられていないMRの方は、「もはやデジタルからは逃げることができない」と腹をくくって、今のご時世に沿った形で考え方を変えていきましょう。
「デジタル」のログを活用して医療関係者の動向を確認せよ!
各社導入が進んでいる「デジタルコンテンツ」ですが、ほとんどの会社で登録された医師や薬剤師が「いつどの時間にどのコンテンツを閲覧したのか」が分かるシステムになっております。デキるMRならすでに「ログ」を駆使してデジタルコンテンツを活用してます。
例えば「どの時間にコンテンツを閲覧したか?」ということについては、「医師がどの時間帯にメールを見ているのか?」が大体の予測が付きます。ですのでその時間帯を狙ってデジタルコンテンツを送付するという活動を行っているMRがおります。
いくら「デジタル」と騒いでも医師や薬剤師がそれを見てくれない限りは何の意味もない「ただの不要なメール」になってしまいます。この様な工夫も「なるほどな〜」と思いました。
デジタルコンテンツを必要な医師に必要な内容を送信せよ!
あとはどの医師や薬剤師がどの様なコンテンツを見ているのか?というのも、どこの会社もシステム上把握できます。それによって医師や薬剤師が「どの様な分野やコンテンツに興味があるのか?」の趣味嗜好が把握出来ます。
医師や薬剤師は毎日何百通とくるメールを一つ一つ開封して対応なんかしてられません。医師でないみなさんも1日に何十通と来るメールを全て見ておられませんよね?よっぽど重要なものか、関心のあるものしか見ないのが常です。医師や薬剤師も同様です。ならば医師や薬剤師の趣味嗜好を把握して、それにマッチングするコンテンツを届ければ、少しは感謝されるはずです。
製薬会社各社のデジタルコンテンツ
各社自社製品関連の情報や医師の対談、ウェブ講演会などのコンテンツを配信してます。どれも似たり寄ったりの内容ですが、参考までに下記の三社のを載せました。
今後「独自性のあるコンテンツ」にするために各社大きな差別化が必要かも知れませんね。
医薬品卸もデジタルの時代へ!製薬会社MRも乗り遅れてはいけない! まとめ
私は他の製薬会社MR方以外にも医薬品卸MSの方、そして医療機器メーカーの方とも接する機会が多いのですが、医療機器メーカーでも最近は会社で「デジタル」と頻繁に言われているそうです。製薬業界だけなのかと思いきや、そうではなさそうです。
ということは今後どの業界に行っても「デジタル」は付いて回るということです。ですのでデジタルに頭の固い方は、今のうちに志向を変える必要があります。これも「働き方改革」の一貫です。世の中のデジタルの波に乗り遅れないためにも、今会社が提供している「デジタルコンテンツ」を上述した様にうまく使いこなし、今の時代にあった「MRとMSの働き方」に変革していきましょう!
コメント