2020年新型コロナウイルスの感染拡大によって製薬会社MRの多くが自宅待機となりました。
しかし医薬品卸MSは営業活動を自粛しながら、配送に専念して医療機関へ医薬品の安定供給を第一に社会的使命を果たされました。
その間のコロナ禍によって、製薬会社MRの医師や薬剤師へのディテールも大きく変化。デジタルはもちろんリモートでのディテールや講演会を開始する製薬会社も出てきました。
医師や薬剤師への情報提供がデジタルやリモートへ移行する中、MR不要論が囁かれました。
一方医薬品卸MSは新型コロナウイルス感染拡大下でも輪番体制で出勤を続けて、医薬品の安定供給を続け社会的使命を果たした事が、評価されました。
しかしここで医薬品卸MSの皆さんが勘違いして欲しくないのは、コロナ渦で評価されたのはMSという機能ではなく医薬品卸の流通機能です。
コロナ禍でMR不要論だけが目立ちますが、決してMSの価値が上がった訳ではありません。
ウィズコロナ環境下ではMRとMSの付き合い方は間違いなく変化します。
そこでMSと MRの両方の立場を経験した私が「ウィズコロナでMRとMSの今後の付き合い方」について考えてみたいと思います。
処方元に影響力のないMSはMRから必要とされなくなる
昨今「MSの処方元に対する力はめっきり落ちてしまった」と言われております。その背景には医薬分業によって医薬品の購入元が医療機関から調剤薬局に移行したためです。
医薬分業によって医薬品を購入してくれる調剤薬局への訪問ウェートが高まるのはいうまでもありません。
しかしMRは「自社の薬を使ってくれる医師の所(医療機関)」をメインに訪問します。でないと自社医薬品の売り上げ向上には繋がりません。
一昔前までは院内処方がメインであり、処方元の医薬品を採用有無に関しても随分とMSが従事っていた時期がありました。
MRの力量には限度があります。そこで処方元への影響力が強いMSの力を借りて自社医薬品の処方を増やしたいというMRの思惑があります。
アフターコロナでMRのリストラによるマンパワー不足と、ウィズコロナによるリモート面談が益々進むと考えられております。
そこで製薬会社各社が喉から手が出るほど欲しいのが「MSの力」なのです。
「処方元に対するMSの影響力の低下」が否めない今ですが、アフターコロナで益々求められるのが「MSの力」です。
製薬会社MRから認められる、支持されるMSになるためにも今一度「処方元に対するMSの力」を是非磨きましょう。
製薬会社MRが欲しいのはMSの情報収集力
「MSの処方元への力」に加えてMRが欲しい情報は、MRでは入手出来ないMSだからこそ持っている院内情報や医師・薬剤師がMRには出さない秘密の情報です。
プライマリー全盛期の時代には、開業医を中心にMSが幅を聞かせておりました。
「●●先生は俺が一言いうだけで採用してくれるよ」「●●先生は俺が一言いうだけでオタクの製品カットできるけど」みたいな感じがありました。
しかし製薬会社各社がスペシャリティへ方向転換している今、医薬品市場とMR活動の中心は病院へと移行しております。
そこで今のMRが欲しい情報はこの項目の冒頭でご紹介したMRが入手できないMSだからこそ入手できる「病院内の情報」です。
特にコロナ禍で全国の基幹病院への訪問規制はしばらく解除されそうにありません。そこで2020年4月薬価改定による見積もり提出や配送業務で出入りするMSからの情報を、製薬会社MRはまさに今干しております。
アフターコロナで「病院内の情報」を取ってきてくれ、MRに瞬時にフォードバックしてくれるMSは今後製薬会社MRから重宝されること間違いありません。
「だったら自分たちで取ってこいよ・・」というMSの嘆きが聞こえてきそうですが( ̄∇ ̄) ただこれはMSにしかできないことであって、今後「病院内の情報」がないMSは淘汰されることになります。
「情報取集力」こそがMSの存在意義であって、「情報収集力」がなければただの「流通業者」になってしまいます。
ただの「流通業者」というレッテルを貼られるのであれば、今後MSもリストラが加速することになるでしょう。
コロナ禍で「医薬卸」としての社会的意義を果たしたことが脚光を浴びたのですから、次はアフターコロナでの「MSの存在意義」を見せつけようではありませんか。
朝の卸訪問も必要なくなる?
医薬卸の朝の風物詩と言えば「朝のMR訪問」です。特段用事もないプライマリー領域やジェネリック専売のMRが「ここは医局の廊下か?」と思うくらいに、壁のシミになっております。
他社メーカーMRの動きをよくよく観察していると、ただ卸に行ってどのMSにも話しかけずに立ち去るMRが沢山いることを目に致します。
こんな「朝の無駄な時間潰し」もアフターコロナでなくなるのではないでしょうか。
医薬品卸内から感染者を出したくない医薬品卸各社は医療機関同様に、卸内への立ち入りを制限しました。全くの訪問禁止の卸もあれば、事前アポイントのみ訪問可能にしている卸もあります。
しかし医薬品卸への訪問のほとんどが「表敬訪問」であり、事前アポイントが必要な案件なんてほとんどないはずです。用件があったとしても電話やメールで済む案件ばかりのはずです。
なので今後は医療機関同様、製薬会社MRの無駄な卸訪問はなくなっていくでしょう。
医療機関同様にリモートやデジタルでのやりとりとなっていくでしょう。
また医療機関へのMSとMRの同行に関しても、三密回避のため、MSだけ訪問してMRはバーチャルで同行なるものを始めているメーカーも出てきてます。
朝の訪問のみならず、ウイルスの媒介になる可能性のあるMRの医療機関への訪問に関しては、今後大きく変化していくでしょう。
MRとのコミュニケーションが希薄になる中で、いかにMSがMRをとっ捕まえるかが今後の鍵となります。コロナ禍だからこそ積極的にMRとコミュニケーションをとりましょう。
今の活動が必ずMSの実績に結びつくはずです。
これからは製薬会社が医薬品卸を選択する時代に!
なんだか製薬会社MRが医薬品卸MSを上から見下したような書き方をして、気分を概した方がいらっしゃるかもしれません。
しかし製薬会社の多くがプライマリーからスペシャリティへ移行している今、以前のような医薬品卸が取り扱う製薬会社製品を選ぶ時代から、製薬会社が取り扱ってくれる医薬品卸を選択する時代へと変貌致しました。
それが今話題の「一社流通」と言われているものです。スペシャリティ品目は温度管理など品質管理が厳格なことから、製薬会社が各医薬品卸の流通機能を見極めた上で取り扱い卸を選択しております。
「一社流通」について、記事を書いてますので、詳しくはこちらをご覧ください!
なので医薬品卸各社は今、スペシャリティ品目の獲得に躍起になってます。「製薬会社に選ばれる医薬品卸になる」ことを感じているMSも多いのではないでしょうか。
「一社流通」より何よりも衝撃的だったのが、2019年4月にノボノルディスクファーマが行った「医薬品卸の絞り込み」です。
これは初めから取引卸を限定することよりもさらに残酷で「途中で取引卸を切る」というものでした。
これによって医薬品卸も「重点的に取り扱うメーカーの品目を決める」立場から、「製薬会社に選ばれる」立場であることが露呈してしまいました。
こうなってしまった背景にはもちろん納入価格が乱れたとか、MSや幹部のメーカーに対する対応が悪かったなど、あるかもしれません。
上記でご紹介したMSの「処方元に対する影響力」や「情報収集力」が今後「選ばれる医薬卸」になるためには必要な要素と言えるでしょう。
ウィズコロナで変わるMRとMSの付き合い方 まとめ
コロナ禍で今後MRとMSの付き合い方は間違いなく変わっていきます。
すでに医療機関へのアプローチ方法が、デジタルやリモートを中心としたものに変化しており、少々遅れることMSとMRの付き合い方もそのようになっていくでしょう。
そしてコロナ禍だからこそ製薬会社各社は医薬品卸MSの力量を見定めてます。今こそ従来の医薬品卸の力の見せ所ではないでしょうか。
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