医薬品卸の大手「メディセオ」が関連会社の「エバルス」「アトル」を含め、希望退職を実施することが発表されました。
2018年から現在にかけて製薬会社のリストラは相次いでおりましたが、医薬品卸の公でのリストラ発表は結構久しぶりです。
メディセオを取り巻く環境としては、2019年10月の談合事件、製薬会社からの取引停止(ノボノルディスク ファーマとGSK)とあまり良いニュースがありません。
今後の医薬品卸を取り巻く環境の変化と、医薬品卸MSのリストラ対策について、元医薬品卸MSとリストラを経験した私の経験値から考えて参ります。
2020年「メディセオ」「エバルス」「アトル」リストラの条件
2020年メディセオ・アトル・エバルスから発表されたリストラ条件は以下の通りです。
●対 象 者 :45歳以上かつ勤続10年以上の社員 (株式会社メディセオの一部職種では年齢・勤続の制限なし)
●募集期間 :2020年12月14日~2020年12月25日
●退 職 日:2021年2月28日
●優遇措置:所定の退職金に加え特別割増退職金を支給するとともに、本制度適用者 に対して再就職支援を実施
と募集人数までは提示されてませんが、条件的には製薬会社各社で行われるリストラに比べるとやや緩い印象を受けます。
メディセオでは過去2009年にリストラを断行してます。その時の条件は、
●対象者:満50歳以上59歳以下で勤続年数10年以上の社員
●募集人数:1000人
ところが実際の応募は257人に留まりました。
メディセオ・アトル・エバルスのHPを覗くと2020年3月31日現在の社員数は7,806人、アトル1,462人、エバルス810名となってます。
冒頭のミクス によるとメディパルグループ3社では、45歳以上の社員は3,500人程度いるとのことですので、2020年のリストラは相当数が応募することが予測されます。
医薬品卸を取り巻く環境の変化
2020年メディセオのリストラ発表と同時に2021年3月期 第2四半期決算短信もプレスリリースされております。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7459/tdnet/1895450/00.pdf
2020年3月期第2四半期の営業利益率を見てみるとなんと0.3%・・ コロナ禍&談合事件&ノボ・GSKからの取引停止と、厳しい状況が続くメディセオの懐事業があらわとなった形です。
ただこれはメディセオに限った話ではなく、どこの医薬品卸もコロナの影響で軒並み売り上げと営業利益を落としております。
今後談合事件の全容も明らかになってくるでしょうし、「流通改善」も大荒れときております。医療機関へ不安定な納入価格も続きますし、菅総理大臣も毎年薬価改定を名言してしまいました。
製薬会社同様、医薬品卸も今後苦境に立たされることは間違いありません。
今後の医薬品卸の展望
コロナ禍で製薬会社MRは必要なMRと不要なMRがはっきりと潜在化致しました。しかし医薬品卸はコロナ禍でも医療機関に医薬品を安定的に届けるという社会的使命を全うしてくれております。
一部の製薬会社同様、医薬品卸はコロナ禍でも大災害でも医療機関や患者にとって、絶対に必要な存在なのです。
ただし医薬品卸は必要でもMSが必要かと言えば疑問符が付きます。 日本医薬品卸売業連合会のデータによると2020年3月末現在、日本の医薬品卸MS数は16,011人と10年前の2010年の19,767人と比べて3,756人も減ってます。
一方の医薬品卸全体の従業員数を見てみると2020年3月末では54,647人に対し、2010年は55,556人と909人の減少に留まってます。
つまり流通業としての医薬品卸は必要でも、MSは時代とともに必要では無くなってきているのが数字からもお分かり頂けると思います。
では医薬品卸MSとして生き残っていくにはどうしたら良いのかについて、次の項目でご紹介致します。
今後の医薬品卸に求められること
2020年10月にGSKがメディセオと地方卸7社との取引停止を発表致しました。
メディセオの2019年度のGSK売り上げは約529億円とのことで、これが少なからず今回のリストラに踏み切った引き金になったかもしれません。
GSKがメディセオを切った記事でも書かせて頂きましたが、今は「製薬会社が医薬品卸を選別する時代」となりました。
今後医薬品卸が生き残っていきためには「スペシャリティやオンコロジー製品がある製薬会社に選ばれること」です。
そのためにはそこの医薬品卸でしかできない流通管理システムやMS力を構築するしか手立てはありません。最近流行の「1社流通」もその一つです。
MS力の構築とは「スペシャリティやオンコロジーに精通」もしくは「デジタルやリモートに精通」しているMSです。今後これが必ずキーとなります。今後もMSとして生き残っていきたい方は、この二つのスキルは必須と思って良いでしょう。
医薬品卸MSでのリストラ対策は万全に!転職サイトには複数登録する!
「メディセオ」「エバルス」「アトル」社員の方は、これから早期退職へ応募される方もいらっしゃるでしょうし、不本意ながらも肩叩きの受け目にあって、退職を余儀なくされる方も出てくるでしょう。
製薬会社MRは現在どこの会社もリストラの危機に瀕していると言っても過言ではありません。なのでほとんどの方が転職サイトに登録して、ネクストステージを模索されております。
しかし医薬品卸MSの方は、地元出身者が多く、ほとんどの方が「まさか自分がリストラになることなどない!」と、丸腰なのでは無かったでしょうか?
コロナ禍、毎年薬価改定、ジェネリックの国策化80%などを見ていても製薬会社はもちろん、医薬品卸の今後も決して明るくありません。
当ブログでも再三申し上げておりますが、終身雇用が約束されない今の時代、会社は個人の雇用なんて守ってくれません。自分の身は自分で守るしかありません。
今回の「メディセオ」「エバルス」「アトル」のリストラでは「再就職支援を実施する」と公表されておりますが、リストラの実現場を経験した私から言わせるとそんなの信用しない方が良いです。
基本的に会社は「去るもの追わず」です。大概再就職支援は第三者機関が行いますので、親身ではありません(個人差がありますが・・)ですので自分の身は自分で守らなければならないのです。
医薬品卸のみなさまは転職サイトへ登録されておりますか? 転職サイトに登録することで、ご自身の今後のキャリアや市場価値、そして医薬品卸としての経験がどれだけ世の中から必要とされているかが分かります。
次の項目でもご紹介致しますが、医薬品卸での経験はどの職種でも通用するスキルです。しかしいざという時に手遅れになる前に、転職サイトには登録してある程度市場価値を把握しておくことは重要です。
そして転職サイトには複数社登録することをおすすめ致します。1社だけですとどうしても企業や職種に偏りがありますし、違った視点のエージェントから様々な意見が聴けますので、複数社登録することをおすすめ致します。
では医薬品卸の方はどの転職サイトに登録すれば良いのでしょうか? 実際に私が医薬品卸MSから製薬会社MRに転職した時にお世話になったのが、誰しもが知る「リクルートエージェント」です。
それが15年近く前ですので、以前に増して転職サイトもかなり充実して参りました。国内のメジャーな転職サイトに登録しておけば安心かと思いますので、いくつか下記にご紹介致します↓
●あなたにぴったりな求人オファー転職サイト側がやってくる「リクナビNEXT」
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まずは2、3社登録してみてレスポンスの良いところから初めてみてはいかがでしょうか? 希望勤務地の設定もお忘れなく!
医薬品卸MSはどの職種でも通用する!
正直製薬会社MRよりは医薬品卸MSの方の転職の方が圧倒的に有利です。
製薬会社MRは、製薬業界内のキャリアを築くには良いのですが、他業種では正直苦労している方が多いです。その理由は、単純な仕事と自由な時間が多いからです。
製薬会社MRの仕事は「医薬品の有効性・安全性の迅速な伝達」です。そして営業訪問先もルートセールスの病院やクリニックがメイン。最近ではアポイント制の導入やコロナ禍で暇を持て余しているMRも多いでしょう。
そして基本MRはほとんどが直行直帰です。通常の営業職ではなかなかありません。「時間にこれだけのゆとりがある」と言うのがコロナ禍でさらに潜在化されたことでしょう。なので他業種に行ったら締め付けに耐えられない方も多いと聞きます。
一方の医薬品卸MSはというと、100社以上ある製薬会社の医薬品を売らなければなりませんし、その売ったお金を回収すると言う「集金」業務もあります。
さらには同じ薬を同業数社で医療機関へ卸しているため、選ばれるために見積もりの作成や、付加価値を持った選ばれるための情報提供もしなければなりません。そして医薬品の仕入れから納品まで流通についてももちろん精通しております。そのためにMRよりも営業全般に関する知識は遥かに豊富です。
そして時間も毎日拘束されてます。朝は同じ時間に会社へ出社しなければいけませんし、基本直行直帰なんてほぼありません。
仕事内容も営業職の川下から川上まで掌握されており、フルタイムで働くことに慣れている医薬品卸MSは、どの職種の営業職でも重宝されます。
正直給料は製薬会社MRの方が高いかもしれませんが、転職に有利なのは幅広い仕事量から圧倒的に医薬品卸MSだと言うのが私の経験値から言えることです。それだけは自信を持って良いかと思います。
【2020年】メディセオが希望退職実施!医薬品卸にもリストラの波が!?まとめ
製薬会社で大手の武田薬品がリストラを断行したのと同様、医薬品卸大手のメディセオがリストラ断行を発表致しました。
医薬品卸各社の決算内容を見てみても、コロナ禍もあってかかなり厳しい決算内容となっております。
さらに来年4月からは毎年の薬価改定も待ち受けてます。大型製品のジェネリックも次々と発売されてくる中、医薬品業界を取り巻く環境は益々厳しくなるでしょう。
メディセオが始めたのなら、他の医薬品卸も追随する可能性は十分にあります。いざという時に「丸腰だった」と言うことのないよう、今のうちに対策を講じておきましょう!
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