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医薬品卸4社談合ニュースから考える今後の製薬会社との関係

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医薬品卸の内情

医薬品卸広域4社による談合のニュースが飛び込んで参りました。

「医薬品卸4社 談合か 57病院運営の独法入札で」

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2001年にも医薬品卸など9社が宮城県内での医薬品納入で価格カルテルを結んでいたとして公取委の排除勧告を受けた事件がありました。なぜ医薬品卸による談合事件は続くのでしょうか?

今回の談合ニュースから元MSの私が今後の製薬会社と医薬品卸との関係について考えて参ります。

なぜ医薬品卸の談合は起こるのか?

その前に「談合」とは何か?について説明致します。「談合」を広辞苑で調べますと、

 

●話し合うこと。談じ合うこと。

 

とありますが、これを今回の事件に置き換えますと、病院から医薬品の見積が出た際に各医薬品卸の担当者間で

 

「この製品は我が社に落札権利をください。なので我が社は◯◯円で見積を出すので、おたくはそれ以上の値段で出してください」

 

とお互い持ちつ持たれつで製品の帳合(◯◯製薬の製品は◯◯卸と決まっていること)や価格を調整していることを「談合」と言います。

 

今回はこの「談合」、見積前の話し合いを4社で行っていたということになります。

ではなぜ医薬品卸の談合は起こるのでしょうか?

 

それは医薬品卸各社の存続がかかっているからと私は考えます。今回の例をとると、一つの製薬会社の製品を巡って4つの医薬品卸どこでも医療機関に卸せるシステムとなっており、となると自然と価格競争が発生致します。

 

近年製薬会社から医薬品卸に対する売上マージンが減少していると言われている中で、各医薬品卸は少しでも多くの利益を得なければならなくなっております。

 

ただでさえ医薬品卸の利益率は1パーセント前後を推移しており、人件費や配送費用などを加味しても、医療機関へは製薬会社からの仕切価格よりも上乗せした価格で納めたいところです。

※出典:薬事日報から抜粋

 

しかし一つの製品を4つの医薬品卸から納入出来るとなると上記で紹介した様に、自然に価格競争が発生致します。

 

それを各医薬品卸で利益を確保するために事前に話し合いをして、利益を確保しましょう、というのが今回の事件の流れかと思います。

結局は売り上げが大きな医薬品卸が残る構図

現在日本には70社もの医薬品卸が存在しております(下図)

※出典:日本医薬品卸売業連合会調査より抜粋

 

医薬品卸の数は年々減少し製薬会社同様に再編が進んでおります。今回の事件で捜索を受けたメディセオ・アルフレッサ・東邦薬品・スズケンが日本の売り上げ4大医薬品卸という構図が出来上がっております。

結局売り上げと財力のある4大医薬品卸が、経営的にも地場で奮闘している医薬品卸よりも余裕がありますので、今後も4大医薬品卸を中心とした再編が進むと考えられます。

 

となると地方で奮起している地場卸にとっては益々不利な状況となり、必然的に各病院の売り上げも多くなるというのが、今の医薬品卸を取り巻く構図となっております。

一社流通であれば談合は起こらない

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ここ数年製薬会社の医薬品卸の一社流通や絞り込みが行われております。一社流通と医薬品卸の絞り込みについては以前記事を書いております。

『キムリア』スズケン一社流通から見る今後の製薬会社と医薬品卸
現在注目の新薬!ノバルティスファーマの新たながん治療薬CAR-T細胞療法『キムリア』その製品を取り扱う医薬品卸が「スズケン」1社限定取引となりました。昨年末のノボノルディスクファーマの「取引卸絞り込み」といい、今後「限定卸」の流れは続きそうです。製薬会社と医薬品卸の今後について検証して参ります!
ノボノルディスクファーマの取引卸絞り込みが意味するものは?
ノボノルディスク ファーマが2018年10月のリストラに続き、取引卸の絞り込みを行うという衝撃的なニュースを発表致しました。オーファンドラッグでは取引卸を1社限定にするという話は最近良く有りますが、突然取引を中止にするというのは前代未聞です。果たして今回のノボノルディスクの取引卸絞り込みが意味するものは?

 

最近になって製薬会社各社はこの「一社流通」や「医薬品卸の絞り込み」を行うようになってきましたが、基本的にほとんどの製薬会社がほとんどの医薬品卸を通じて医療機関に薬を納めることが出来ます。

 

全ての医薬品卸が同じ製品を納めることが出来るため、価格競争が勃発。医薬品卸各社が話し合いをして利益率を確保するため、お互いに利益を取れる価格設定にしましょう、というのが今回の談合のメカニズムかと思います。

 

これが今流行の「一社流通」であれば、その製品を扱える医薬品卸は1社のみとなりますので、今回のような談合は起こりません。

薬価制度抜本改革によって新薬創出加算品の減少や長期収載品の大幅薬価ダウン、ジェネリック医薬品80%国策化などによって製薬会社各社も厳しい経営状況となっております。

 

2018年から2019年にかけてリストラ(早期退職)を行った製薬会社がいくつもありました。

 

製薬会社からすると「一社流通」は価格の下落を抑えるとともに、薬価の差が止まりにもなり、願ったり叶ったりの方策でもあります。ただここで誤解をして欲しくないのは「一社流通」のメリットはこれだけではありません。

 

その医薬品卸しか持っていない保管体制や保冷方法などがあり、そこの医薬品卸しか扱えない製品があって「一社流通」にせざるを得ないという事情があるのも、ここで付け加えさせて頂きます。

 

製薬会社各社はプライマリーからスペシャリティやオンコロジーへの転換を図っており、今後「一社流通」が益々進むと考えられます。

 

この事件をきっかけに「一社流通」や「取り扱い医薬品卸の絞り込み」が進むと考えるのは私だけでしょうか?

医薬品卸4社談合ニュースから考える今後の製薬会社との関係 まとめ

今回の談合事件の真相はこれから明らかになると思いますが、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いでメディセオ、アルフレッサ、東邦薬品、スズケンの4社を強制調査し、検察当局への刑事告発を視野に調べを進めているとのことです。

 

製薬会社MRのみなさまは「今回の事件は医薬品卸のことであって関係ない」と思っていては大間違いです。この事件は今後の医薬品業界を揺るがす一大スキャンダルと言えます。

 

製薬会社MRは医薬品卸を通じて自社の医薬品を医療機関に納めてもらっております。そして日々その医薬品卸MSとのコミュニケーションが欠かせません。

今回の一連の事件に伴って取引が停止になったり中止になったりする病院もあるかもしれません。医薬品卸MSとコラボレーションして医薬品を納めている病院もみなさまの中にはあるはずです。

 

それが今回の事件によって崩れる可能性すらありますので、製薬会社MRも他人事と考えずに、この事件の経過を注視して頂ければと思います。

コメント

  1. 本間太郎 より:

    一つの病院が都市部から離島にある診療所迄経営しているところがあります。一例として特に日本では東京都や国がが伊豆7島に病院診療所を持っているところがあります。都市部への医薬品卸の配送費は経費も効率的に配送ができます。半面離島などには船や飛行機での配送費費その他の新製品の紹介MRの旅費がかかるのや運搬経費が大きくのしかかってきます。国や一部の地方の機関はこれら経費を無視して薬のみの見積もりを取ります。都内への配送経費と離島への配送経費が全然違います。こんなんじゃ「落札しして」も配送費で経費が掛かりすぎら落札した卸は「大赤字」になることは当たり前です。遠くへの配達と隣への配達では「運送費が大幅に変わるのは当然です」。そこを何も考えないで見積もりを都市部も離島も一緒に出させていませんかね。配送費は必ず別途費用として見積もらせないとおかしいではありませんか。東京都は特に注意が必要です・・・こんなのは一例ですよ!!!

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